利用運送の登録(許可)について
運送業と利用運送って何が違うのか?という質問を良くいただきます。
運送業界に勤務していた方ならわかると思いますが、
それでも中にはきちんと理解してない方も結構いらっしゃいます。
さらに運送業界以外の方となると利用運送という言葉すら聞いたことがないのではないでしょうか?
そんな利用運送について分かりやすくポイントだけ説明していきます。
利用運送とは?
ものすごく簡単な言い方をすると、外部の配車係というイメージが分かりやすいかと思います。
運送業とは違い、実際にトラックを持たずに荷物のやりとりをする形態です。
荷主から依頼を受け、運賃を貰い、他の運送業者を手配するというスタイルです。
「取扱」といった方がピンと来る方もいるかもしれません。
下の図を見ていただければよりイメージしやすいかもしれませんね。
そして、利用運送は、第一種貨物利用運送事業と第二種貨物利用運送事業に分かれます。
これも図を見ていただいた方が分かりやすいと思います。
さいとう事務所では、第一種利用運送事業の登録申請のみ対応しております。
以下の文章は全て第一種利用運送事業の登録申請の場合になります。
利用運送の特徴
- 自社でトラックや駐車場を持たなくていい
- 自宅で電話さえあれば仕事ができる
- 貨物と違い運行管理者などの資格が必要ない
- 運送の責任は利用運送業者が負う
- 運送契約は荷主と利用運送業者が結び、その後、利用運送業者が運送業者と運送契約を結ぶ
利用運送業者として登録するための要件は?
ヒト
以下に該当する場合は、登録が拒否されます。
- 1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、執行が終わってから、または執行を受けることがなくなってから2年を経過していない。
- 第一種貨物利用運送事業の登録または第二種貨物利用運送事業の許可の取消しを受け、取消しの日から2年を経過していない。
- 申請前2年以内に貨物利用運送事業に関し不正な行為をした。
- 法人の役員が上記のどれかに該当する。
- 事業に必要な営業所などの施設を有していない。
- 財産的基礎(カネ)を有していない。
■運行管理者は必要か?
運送業(一般貨物自動車運送事業)と違い、運行管理者の資格などは必要ありません。
■個人でも登録できるの?
はい。個人でも法人でも要件をクリアしていれば登録は可能です。
モノ
利用運送を行う場合、必ず営業所が必要になります。
営業所についてはどこでもいい訳ではなく、以下の点に注意する必要があります。
- 都市計画法等関係法令(農地法、建築基準法等)に違反していないか?
- 賃貸の場合、きちんと賃貸借契約が結ばれているか?
- 保管施設があるときは、保管施設についても同様
- 保管施設の図面や書類があり、施設として適切か?
カネ
利用運送を始めるためには300万円以上の資金を有している必要があります。
法人であれば決算書、個人であれば財産の調書を作成し証明します。
法人の場合
法人の場合は、純資産が300万円以上あることが条件です。
もし、300万円以上の純資産がない場合は、増資手続きをすることになります。
■純資産とは?
純資産とは決算報告書の中にある「貸借対照表」の右側の下の方にある項目のことです。
ここの「純資産合計」という項目が300万円を超えているかどうかで判断します。
なので、資本金が1,000万円だろうが、残高証明が1億円あろうが、
純資産が300万円を超えていなければNGなのです。
■純資産が300万円以下の場合
そんなこと言ったって、純資産そんなにないし、急に増資しろなんて言われても…
という場合には「みなし貸借対照表」や「合計残高試算表」を作成し、
純資産が300万円を超えていれば要件を満たすことになります。
ただし、当たり前ですが、適当に作ってはいけません。
そんなことをしたら犯罪になります。
必ず根拠のある計算書類を作成する必要があります。
みなし貸借対照表などを作成するときの注意点は、
申請日直前の月末の時点で作成する、ということです。
例えば、1月15日に申請するのであれば、
前年の12月31日時点でのみなし貸借対照表などを作成することになります。
■新しく会社を作って申請する場合は?
新しく会社を作って申請する場合は、当然ながら決算報告書なんてあるはずもなく、
貸借対照表を提出することが出来ません。
なので、「開始貸借対照表」という書類を作成し、これを添付することになります。
新しく会社を作ったときにコレだけ純資産がありましたよ、という書類です。
当然ながら、新しく会社を作る場合には、資本金300万円以上にする必要があります。
利用運送の登録に必要な書類
法人・個人共通
- 登録申請書(さいとう事務所で作成します)
- 事業計画書(内容をお聞きし、さいとう事務所で作成します)
- 委託先の運送業者との契約書
- 宣誓書(2種類あります。さいとう事務所で準備します)
- 運賃表
法人の場合は以下が追加で必要になります。
- 会社の登記簿と定款
- 直近の貸借対照表(場合によっては「みなし貸借対照表」など)
- 役員全員の履歴書と名簿
個人の場合は以下が追加で必要になります。
- 財産に関する調書
- 戸籍
- 履歴書
利用運送許可(登録)の流れ
利用運送の登録が完了するまでの期間
登録の申請をしてから登録が完了するまでおおよそ2か月から3か月の期間がかかります。
また、登録が完了した後に運賃の設定届出を提出する必要があります。
運賃の設定届出を提出することで、やっと事業を始めることが出来ます。
■登録の申請から事業開始までの流れ
- 登録の申請についての打合せ
- 申請書類の作成・提出
- 運輸局での審査(約2~3か月)
- 審査完了・運輸局から登録通知が発行される
- 登録免許税の支払い(9万円を納付書で納める)
- 運賃料金設定届の提出
- 事業スタート!!
登録した後の注意点
事業報告書等の提出
利用運送事業者は、事業報告書と事業実績報告書を毎年1回定められた提出期限までに、
提出する必要があります。
事業概況報告書
事業概況報告書は、毎年、決算日から100日以内に提出します。
事業実績報告書
事業実績報告書は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間の貨物の取扱実績の関する報告書です。
7月10日までに提出します。
事業計画の内容に変更があった場合
登録を申請したときに提出した事業計画のうち、以下の事項に変更のある場合には、
事業計画の変更登録申請または変更届出が必要になります。
- 利用運送に係る運送機関の種類の変更(変更登録)
- 利用運送の区域又は区間の変更(変更登録)
- 主たる事務所の名称又は位置の変更(変更届出)
- その他の営業所の名称及び位置の変更(変更届出)
- 業務の範囲の変更(変更登録)
- 貨物の保管施設の変更(変更届出)
- 利用する運送を行う実運送事業者又は利用運送事業者の変更(変更届出)
- 事業者の氏名・名称・住所・国籍・役員の変更
利用運送事業者の氏名もしくは名称、住所又は国籍、法人であって役員に変更があった場合は、
変更届出が必要になります。
代表取締役の変更は、変更後に遅滞なく届出を行わなければなりませんが、
代表権の無い役員の変更の場合は、毎年7月31日までに届出を行えば足ります。
運賃・料金の改定
利用運送の登録に行った運賃・料金の届出内容に変更があった場合は、
変更日から30日以内に、変更後の運賃料金の変更届出が必要です。
事業承継
第一種貨物利用運送事業の譲渡譲受、個人から法人成り、合併及び分割、相続を行った場合は、
その地位を承継した事業者が、承継の日から30日以内に届出が必要です。
事業の廃止
利用運送を廃止する場合は、実際に事業を廃止した日から30日以内に届出が必要です。
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