運送業の新規の申請から営業開始までの流れ
新規で緑ナンバーを取得し運送業を始めようと思ったら、いろいろな手続きを一つ一つクリアしていかなければいけません。
これが思ったより時間も手間もお金もかかるのです。
ちなみにこの一連の手続きを一般貨物自動車運送事業経営許可申請と言います。
そんなのトラックに決まってるじゃないですか?
でもトラックだけとは限らないんです。
どういう事ですか?
病院等で亡くなったご遺体を運ぶ搬送車も
一般貨物の新規許可申請の対象なのです。
緑ナンバーついてますね。
あとは家庭ごみなどを回収する
一般廃棄物の車なんかもそうですね。
新規許可申請は大きく分けて2つ
じつは、新規の申請といえば運送業の手続き上、一般貨物と霊柩しかないのです。
すなわち、運送業の新規の申請は、トラックか霊柩車のどちらかしかないのです。
ちなみに霊柩の場合はこちらのページで詳しく説明しています。
さらにトラックの場合も一般か特定に分かれますが、基本的には一般で説明します。
話を戻します
この運送業の新規の申請なのですが、想像以上に時間がかかります。
弊所ご依頼いただくお客様には、運送業の新規の申請をしてから実際に運送業がスタートするまで約1年位見てほしいとお伝えしています。
もちろんスムーズに行けば7~8か月位で始められる場合もありますが、余裕をもって1年というご案内をしています。
実際に運送業の新規の相談をいただいてから書類を作成し、申請書を提出するまでにもおよそ1~2か月位かかります。
なぜなら、運送業の新規の申請は、申請業務としてはかなり難しい部類に入るので、クリアしなければいけない要件や用意しなければいけない書類などボリュームがハンパないのです。
では運送業の新規の申請についてポイントと流れを説明します。
ポイント1 運送業の新規の申請には法令試験がある!
運送業の新規の申請の1つのハードルとして「役員の法令試験」なるものがあります。
試験なんかがあるんですか?
残念ながら。
これはトラックも霊柩も一緒です。
法人で申請する場合は、基本的には代表取締役(取締役でも大丈夫です。)が、個人で申請する場合は、申請した個人本人が法令試験を受けるのです。
個人でも大丈夫なんですか?
勘違いされている方も多く、あまり知られていないのですが個人事業主でも条件を満たせば許可を取ることはできます。
そして、その法令試験に合格しないと審査が進まないのです。
詳しくは役員の法令試験についてをご覧ください。
しかも!チャンスは2回まで!
この法令試験に2回目で合格できないと申請を取り下げることになってしまいます。
法令試験は、いつでも受けられるわけではないので、運送業の新規の申請と法令試験のタイミングを合わせることが早く事業を始めるためのポイントになります。
ポイント2 許可が下りてから勝負!
運送業の場合、新規の許可が下りたからといってすぐに緑ナンバーを付けて営業することができるわけではありません。
始められるんじゃないんですか?
運送業をすぐに始めることはできません。
なので、実は、許可が下りてからが勝負だったりするのです。
許可が下りた時点でやっと半分クリアしたかなといった感じです。
でも、きちんと段階を踏まないとダメなんです。
許可が下りたと喜んだのも束の間、次から次へとやることが出てきます。
具体的には、運転手の確保、社会保険等の加入、帳票類を揃えたり、
健康診断や適正診断の受診、運行管理者や整備管理者の選任届を出したり・・・。
こういった事を1つ1つクリアしてやっと「運輸開始前確認届」にたどり着けるのです。
どうでしょう?長いですよね。お互いが協力してムダなく進めたいところです。
この時点での段取りをどれだけスムーズにできるかが運送業専門の行政書士としてのウデの見せ所です。
ここで段取りを1つでも間違えてしまうとどんどんムダな時間が過ぎてしまいます。
それでは実際に、どんな段取りが必要になるのか?
例を1つあげると、「運転者」です。
実際に採用、雇用する運転手はどんな運転手なのか?
過去の経歴や職歴で運転させる前にやる事が変わってきます。
前職はどんな会社で働いていたのか?事故歴は?年齢は?
こういった細かいことをきちんと確認し、事前に適正診断を受診させなければいけません。
適正診断もいくつかのパターンに分かれるのでどのような内容の適正診断を受診すればいいかをきちんと把握していないとダメなのです。
さらに、適正診断を受診するだけではなく、適正診断の内容に合わせた指導教育を行いそれを記録に残す必要があります。
もちろん、適性診断以外にもやることはたくさんあります。
ポイント3 スタート前にもうひとがんばり!
終わりましたよ、齋藤さん!
大変でしたね。
でも、ここまでくれば運行開始は目前です!
やっと「運輸開始前確認届」の提出が完了すれば、もう一息で運送業がスタートできます。
この運輸開始前確認届の提出が完了すれば、念願の緑ナンバーをゲットすることができます。
なので、運輸開始前確認届の提出をする前までに、車両の名義変更やナンバー変更に必要な書類を準備しておかなければいけません。
具体的には、委任状や譲渡証、印鑑証明、事業用連絡書等です。
最後のハードルが「運行開始届」です。
これでひと先ずは手続き完了です。
運行開始届を出すには、緑ナンバーにした車両を任意保険に加入させたり、切替えたりしなければなりません。
任意保険の切り替え等が完了したらいよいよ運送業のスタートです。
最後に「運行開始届」と「運賃・料金設定届」を提出し手続きはやっと完了となります。
ちなみにここでは全く触れていませんが、「運賃・料金設定届」も超重要です。
これをしっかり理解してちゃんとやらないと自分で自分の首を締めることになりますので十分注意して下さい。
そしてその後、おおよそ2ヶ月から4ヶ月位でいよいよ初回の適正化事業実施機関による巡回指導となるのです。
- 打ち合わせ
- 要件チェック・調査開始
- 見積書発行後、業務着手
- 各種書類の収集、預金残高の確認
- 申請書作成
- 申請書提出
- 役員の法令試験受験
- 経営許可が下りる
- 各種帳簿の準備、運転手の確保、社会保険加入
- 車両の準備
- 運行管理者、整備管理者等の選任届の提出
- 運行開始前確認届の提出
- 車両に青ナンバーを取り付け
- 運行開始届、運賃料金設定届の提出
運送業スタート
以上が、運送業を始めるときのおおまかな流れになります。
許可を取るための要件などをもっと詳しく知りたい方は以下をクリックして下さい。
「運送業の役員法令試験について」をクリック。
こちらもおすすめです。「運送会社の設立」
新規で許可を取った後の運輸局に対する申請や手続き
続いて、運送業の許可を取った後に変更等があった場合について、具体的にどんな手続きが必要になるのかを説明します。
重複になりますが、まず、一番最初に運送業を始めるときは「一般貨物自動車運送事業経営許可申請」をして「運送業を経営していいですよ」という許可をとる必要があります。
この許可がないと、いわゆる緑ナンバーでトラックを走らせることは出来ません。
そして、最初の申請内容から変更するときには、事前に認可申請をする必要があるんです。
やっと許可を取ったのにさらに面倒な手続きがあるんですね…
最初の計画の内容が変わる場合は手続きが必要になるんです。
もちろん、新規の事業者だけではなく、許可を持っている事業者さん全てが対象です。
事業開始後に内容を変更する、または変更が合った場合の手続き
- 認可申請
- 届出
- 報告
なんだか難しそうですね。
全部が全部難しいわけではないです。
まず「認可申請」について説明します。
認可申請は、届出や報告といった他の手続きと比べて、重要度が高い手続きです。
内容も難しいものばかりです。
届出や報告が事後提出(後出し)のものがほとんどなのに対し、認可申請は、事前に申請をして認可になるまで2~3ヵ月かかる場合がほとんどです。
認可申請が必要な手続きは以下になります。
タイトルにリンクを設定しておりますので、もっと詳しく知りたい場合はリンクをクリックして該当ページへ進んで下さい。
認可申請
- 運送約款の変更
- 運送事業の譲渡し又は譲受けをするとき
- 合併又は分割しようとするとき
- 相続により引き続き事業を行おうとするとき
- 営業所や休憩施設の新設、移転、増設
- 車庫の面積の増減、新設、移転
- 利用運送の有無(庸車、外注)などの変更
- 車両が5台を割る場合の減車
- 一定数以上の急激な増車
- 一定条件をクリアできない事業者の増車
次は「届出」です。
事業が順調に成長してくると、組織が変わったり、拠点が変わったりすることがどんどん出てきます。
例えば、法人であれば、会社の役員が変わった、会社の本店を移動した、なんて場合が該当します。
また、事業が成長すれば必然とトラックの台数も増えてくるのが自然ですよね。
もちろん、故障や老朽化などで手放したりするときもあるでしょう。
このような場合、必ず陸運局に対して手続きをしないといけないのです。
これらの手続きを「届出」といいいます。
変更したことについてはきちんと
届出をしなければいけません。
で、どんな変更が対象なんですか?
変更届が必要な場合
- 車両の増車や減車
- 営業所の名称等を変更したとき
- 運行管理者や整備管理者を選任、解任、変更したとき
- 運送業を休止又は廃止したとき(事後届出から事前届出制に変更)
- 譲渡し譲受け又は合併が終了したとき
- 休止していた運送業を開始したとき
- 事業者の氏名、名称、住所、役員に変更があったとき
- 運賃料金を変更したとき
- 行政庁からの命令を実施したとき
これらの届出をきちんと提出していないと事業を拡大しようとしたときにひっかかります。
では、届出はどんな内容の手続きになるのでしょうか?
代表例をいくつか挙げておきます。
車両の増車や減車
これはもう説明不要ですね。
トラックの台数を増やしたり減らしたりする手続きです。
もうご存知かもしれませんが、勝手にトラックを増やしたり減らしたりすることはできないのです。
ちゃんと増やしますよー、減らしますよーという手続きが必要になります。
営業所の名称等を変更したとき
営業所の名称が変わる場合です。
どんな場合かと言うと、「本社営業所」という名称だった所が「栃木営業所」になりますよ、ってときに届出を出す必要があります。
運行管理者や整備管理者を選任、解任、変更したとき
これも読んで字の如く、運行管理者や整備管理者を変更になったり、辞めたりしたときには届出が必要になります。
運行管理者の補助者を選任したときも
届出は必要になるでしょうか?
また意地悪な質問しますね…
どっちかなぁ😳
正解は補助者は届出は不要です。
これは整備管理者も同様です。
てっきり届出が必要なのかなって思ってしまいました。
運行管理者、整備管理者ともに補助者の場合は選任届は不要ですが、運行管理規程や整備管理規定で定めた通りの手続きが必要になります。
運送業を休止又は廃止したとき
残念ながら業績不振、後継者不在などで運送業を辞める、
または一時的に休止をするといった場合も届出が必要になります。
以前は事後届出だったのですが、法改正後からは事前届出制になりました。
詳しくはコチラのページをご覧ください。
譲渡し譲受け又は合併が終了したとき
これはあまりないケースなのですが、譲渡譲受の認可申請が完了したときや合併などの承認が下りた場合にも届出が必要になります。
休止していた運送業を開始したとき
一度、運送業をお休みしていた事業者が再度、運送業を始めるときの手続きです。
事業者の氏名、名称、住所、役員に変更があったとき
これも読んで字の如くですね。
会社の商号や会社の本店の住所、取締役や監査役、社長の交代や辞任などがあった場合は忘れずに届出をしないといけません。
運賃料金を変更したとき
これもあまりご存知無い方が多いのですが、運送業の場合、事前に運輸局に料金体系を届出するのです。
原則、その運賃通りに経営しなければならないのですが、一度定めた運賃を変更する場合の手続きがこの届出になります。
詳しくはコチラのページをご覧ください。
最後は「報告」です。
運送業を経営していくうえで届出とは別に、毎年必ず提出しなくてはならない書類があります。
さらに万が一、事業用のトラックで事故を起こしてしまった場合、報告書の提出が必要になる場合があります。
これらの制度を、「報告」といいます。
ホントやることが多くてイヤになりそうです…
きちんとやらないとダメなんです。
それに、ちゃんとやらないとペナルティもありますからね!
ペナルティってなんですか?
増車手続きができなくなったりする可能性があるんです。
それは大変だ…
ちゃんとやらなきゃだめですね…
舐めてたらだめですよ。
ただし、報告については3つしかないのでこの機会に覚えてしまって下さい。
報告が必要な場合
- 事業実績報告書
- 事業報告書
- 自動車事故報告書
でもご安心下さい。
事業報告書、事業実績報告書、事故報告については別のページで詳しく説明していますので下記のリンクをクリックして下さい。
事業報告書
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