運送業(一般貨物)の許可は、ほかの許認可とちがい、事業ごと別の会社や個人に引き継ぐ手続きが法律で認められています。それが「譲渡譲受の認可申請」です。個人事業の法人化、親会社から子会社への事業の移管、廃業する会社からの引き継ぎなどで使われます。ただし、新規の許可と同じく法令試験や残高証明が必要で、どんな場合でも新規より有利になるわけではありません。このページでは、譲渡譲受の仕組みと、新規・分割・株式取得との違い、選び方の目安を説明します。

譲渡譲受とは

運送事業を営んでいる人(譲渡人)が、事業を別の人や会社(譲受人)に譲り渡し、国土交通大臣(運輸局)の認可を受けて、譲受人が運送事業を引き継ぐ手続きです(貨物自動車運送事業法第30条)。

譲渡人(A社)運送事業を営んでいる
事業用の資産と
運送事業を譲渡
譲受人(B社)認可を受けて運送事業を開始
認可後のA社運送業の許可はなくなる
認可後のB社A社の事業を引き継いで運送業を営む

「許可だけ」を売り買いすることはできません

譲渡譲受は、あくまで事業の譲渡です。トラック、営業所のプレハブ、配車システムの入ったパソコン、据え置き型のアルコール検知器など、事業に使う資産とあわせて譲り渡します。何を譲渡するかや、その価格に決まったルールはなく、無償でも申請できます。ただし、価格の決め方は税務や資金計画にも影響するので、慎重に決める必要があります。

新規許可との違い

新規許可申請 譲渡譲受の認可申請
審査の期間(目安) 3〜5か月 1〜3か月
役員法令試験 必要 必要(試験の内容は同じ)
残高証明(資金計画) 必要 必要
登録免許税 12万円 かからない
過去の行政処分の点数 なし 引き継ぐ
譲渡する相手 不要 事業を譲ってくれる相手が必要

審査の期間が短く、登録免許税もかかりません。一方で、法令試験と残高証明は新規と同じく必要です。さらに、譲渡人の行政処分の点数まで引き継ぐという、新規にはない注意点があります。

譲渡譲受が向いているケース

  • 個人で運送業の許可を持っている人が、法人化するとき
  • 個人で許可を持っている人が、別の個人(親族など)に事業を譲るとき
  • トラック・車庫・営業所・配送センターなどの施設を、まとめて安く譲ってもらえるとき
  • 親会社が運送業をやめ、子会社に運送事業を移すとき
  • どうしても1日でも早く運送業を始める必要があるとき

逆に、譲ってくれる相手と特別な関係がない場合は、新規の許可申請のほうが結果的に早く、確実なことが多いです。弊所にご相談いただいたケースでも、新規と譲渡譲受で迷った方の10件中9件は、最終的に新規を選んでいます。

分割・合併、株式の取得との違い

運送事業を引き継ぐ方法は、譲渡譲受のほかにもあります。会社の状況や目的によって、向いている方法が変わります。

方法 どんな手続きか 主なポイント
譲渡譲受 事業を別の会社・個人に譲り渡す 譲渡した側の許可はなくなる。運輸局の認可が必要
分割 会社分割で、運送事業の全部または一部を別の会社に移す 一部を分割した場合は、分割した側にも許可が残る。認可を受ける前に分割の登記をすることはできないため、司法書士との段取りが重要
合併 会社どうしが合併し、運送事業を一つの会社にまとめる 運輸局の認可が必要。手続きが複雑で、中小の運送会社どうしではあまり使われない
株式の取得 許可を持つ会社の株式を買い、会社ごと引き継ぐ 許可を持つ会社自体は変わらないため、譲渡譲受の認可は不要。役員の変更届や、営業所の移転などの手続きが必要になることが多い。会社の過去の行政処分や債務もそのまま引き継ぐため、事前の調査が欠かせない

弊所では、許可を持つ会社を取得したあと、営業所の移転認可から事業の再開届まで対応した案件が5件あります。どの方法が合うかは、相手先との関係や資金、引き継ぐ資産によって変わります。

譲渡譲受の主な要件

譲受人(引き継ぐ側)には、新規の許可申請とほぼ同じ要件が求められます。

  • ヒト:運行管理者・整備管理者・運転者の確保
  • モノ:営業所・休憩施設・車庫・車両の確保(譲渡を受ける資産を含む)
  • カネ:事業を始めるのに必要な資金があることを、残高証明で示す
  • 役員法令試験への合格

それぞれの要件は、「一般貨物の新規許可申請」や「資金計画」のページで詳しく説明しています。

譲渡譲受で注意すべき7つのポイント

  1. 譲渡人の許可はなくなる:譲り渡したあと、譲渡人は運送業を続けられません。
  2. 役員法令試験は1回目で合格を目指す:受験は2回までで、不合格だと申請をやり直すことになり、時間を大きく失います。
  3. 引き継ぐ車両が多いほど、必要な資金も増える:残高証明で示す金額が大きくなります。
  4. リースの承継・任意保険・ETCなどは早めに準備する:名義の切り替えに時間がかかるものがあります。
  5. 譲渡する資産の価格は慎重に決める:税務や資金計画に影響します。
  6. 認可が出る日に向けて段取りを組む:車両の名義変更、運行管理者の選任など、認可後すぐに行う手続きが多くあります。
  7. 運送業専門の行政書士に相談する:新規・分割・株式取得との比較も含めて、最初の判断が結果を左右します。

報酬

譲渡譲受の認可申請

770,000円(税込)

含まれる業務

  • 要件の調査
  • 申請書類の作成
  • 役員法令試験対策セミナー
  • 譲渡する資産の算定
  • 運行管理者・整備管理者の選任
  • トラックの名義変更の書類作成(5台まで)
  • 終了届の作成・提出

※ご依頼の際に、着手金として200,000円を事前にお振り込みいただいています。

よくある質問

運送業の許可は売買できますか?
許可だけを売り買いすることはできません。トラックや営業所の設備など、事業に使う資産とあわせて事業を譲り渡し、運輸局の認可を受けることで、譲受人が運送事業を引き継げます。
譲渡譲受なら、法令試験は不要ですか?
いいえ。譲渡譲受でも、譲受人の役員は新規許可と同じ役員法令試験に合格する必要があります。残高証明による資金の確認も必要です。
新規許可と譲渡譲受は、どちらが早いですか?
審査の期間の目安は、新規が3〜5か月、譲渡譲受が1〜3か月です。ただし、譲渡の相手との調整や資産の準備に時間がかかることもあり、相手と特別な関係がない場合は、新規のほうが結果的に早いこともよくあります。
個人で取った許可を、法人に引き継げますか?
はい。個人から法人への引き継ぎ(法人成り)は、譲渡譲受がよく使われる代表的なケースです。法令試験と残高証明が改めて必要になります。
許可を持っている会社を買う場合も、譲渡譲受の認可が必要ですか?
株式を取得して会社ごと引き継ぐ場合は、許可を持つ会社自体は変わらないため、譲渡譲受の認可は不要です。ただし、役員の変更届や営業所の移転などの手続きが必要になることが多く、会社の過去の行政処分や債務も引き継ぎます。事前の調査が重要です。

事業の引き継ぎ・許可を持つ会社の取得は、まずご相談ください

譲渡譲受・分割・株式の取得・新規許可のどれが合うかは、相手先との関係、引き継ぐ資産、資金によって変わります。運送業専門の行政書士が、最初の方法選びからお手伝いします。