運送業の営業所の移転や新設について

一般貨物自動車運送事業(以下、「運送業」と言います)が軌道に乗ってくると、

それに比例して会社の規模も大きくなります。

どんどん車両が増えて、新規許可申請で申請した車庫では手狭になったり、

新たに別の拠点を設ける必要が出てきたりします。

 

運送業において「営業所」「車庫」はとても重要な項目です。

営業所や休憩室を勝手に変更したり、引っ越ししたりすることはできません。

きちんと認可申請をして、認可が下りてからじゃないと

適法に営業所や休憩室として使用することは出来ません。

 

勝手に営業所や休憩室を移転したり、別の場所に別の営業所を出して営業をしていると

無認可の営業となり厳しい行政処分を受けることになります。

休憩室についてはコチラをご覧下さい。

 

営業所の変更に関する手続きとは?

  • 営業所の新設(今の営業所とは別に新しく営業所を出す場合)
  • 営業所の移転(今の営業所から別の場所に引っ越す場合)
  •     

  • 営業所の廃止(本社営業所以外の営業所を廃止する場合)

 

事業計画の変更認可申請が必要です。

運送業の営業所の新設・移転の変更に関する手続きは

ほとんどの場合、認可申請が必要になります。

廃止についてはコチラをご覧下さい。

 

ということは、色々な条件をクリアして認可申請をしないと認可が下りません。

また、申請をしてから認可が下りるまで通常は早くて3か月位、

場合によっては4か月以上かかる場合もあります。

 

再度になりますが、認可が下りていない営業所を勝手に使用することは出来ません。

調査や手続きの順番間違えてしまうと、その分だけ時間やコストが余計にかかります。

さらには行政処分の対象となってしまう可能性まで出てきてしまいます。

 

ここに注意!!

それでは具体的な要件に入る前に大前提として、以下のどれかに該当しないか確認しましょう。

  • 欠格要件に該当する人役員等にいないか(欠格要件についてはコチラ)
  • 申請日前3ヶ月間又は申請日以降に巡回指導で「E」評価だったかどうか
  • 申請日前3ヶ月間又は申請日以降に自社が原因による重大事故を起こしていないか
  • 申請する営業所に車検切れの車両はないか
  • 事業報告書事業実績報告書運賃料金変更届出書その他提出義務のある書類を提出しているか
  • 適切な運送約款を使用しているか

 

 

営業所の要件

運送業の新規の許可申請の場合はコチラをお読みいただければわかりやすいと思いますが、

ここでも再度、要件を説明します。

 

  • 1.営業所の場所は?
  • 2.営業所は適法に建てられた建物か?
  • 3.営業所の使用権原は?
  • 4.営業所と車庫との距離は?

これらの要件を全てクリアしないと営業所に関する認可は下りません。

とても重要な項目ばかりなので1つ1つ説明します。

 

1.営業所の場所は?

運送業の営業所はどのような場所なら大丈夫なのでしょうか?

この疑問を解決するために理解しなければいけないとても重要な法律があります。

それが都市計画法です。

都市計画法の中で定められている「用途地域」という規定があり、様々な規制がかけられています。

 

その用途地域の区分によって建てられる建物が変わってきます。

家は建てられても事務所は建てられない場合もあります。

お店が建てられても事務所は建てられないなどの制限があります。

 

当然ながら事務所が建てられない地域に立っている建物は、

運送業の手続上、営業所として使用することは出来ません。

 

用途地域

では、都市計画法で定められた用途地域いついて具体的に説明します。

ここでは、都市計画法と言いますが、具体的には各都道府県や市町村が

定めた都市計画条例に従うことになります。

そして、以下の表では、それぞれの用途地域に運送業の営業所を

設置できるのかどうかを〇×で示してあります。

用途地域 営業所
第1種低層住居専用地域 ×
第2種低層住居専用地域 ×
第1種中高層住居専用地域 ×
第2種中高層住居専用地域
第1種住居専用地域
第2種住居専用地域
準住居地域
近隣商業地域
商業地域
準工業地域
工業地域
工業専用地域

※第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域・第1種中高層住居専用地域であっても例外はありますが、どうしてもという場合でなければ考慮しない方が賢明です。

 

市街化調整区域と農地

市街化調整区域には、原則として運送業の営業所を置くことは出来ません。

例外として、開発行為を得ている物件で目的が合致している場合や

線引前から建てられている物件を使用する場合や

トレーラーハウスを使用して営業所として申請するケースがあります。

トレーラーハウスでの認可申請についてはコチラをご覧下さい。

開発行為が絡む場所や、線引前の物件などは非常に高度で繊細な調査が

必要になりますので細心の注意を払って進める必要があります。

 

さて、色々な制限が掛けられている市街化調整区域ですが、

そもそも、市街化調整区域は、簡単に言うと、農地を守るための制度です。

そのため、運送業の営業所の候補地が万が一、

市街化調整区域内の場合は、調査を慎重に行います。

そして、市街化調整区域内の土地に建物を建てて、

その建物を営業所として使用したい…。

という問い合わせをいただくことが非常に多いのですが、

今のところ実現に至ったケースはありません。

 

2.営業所は適法に建てられた建物か?

運送業の営業所として使用したい建物は、

きちんと必要な手続きを踏んで建てられた建物ですか?

建物を建てるという事は、建築基準法や消防法などで定められた手続きを踏まなければ、

原則として建物を建てることは出来ないのです。

特にプレハブは注意が必要です。

 

用途制限の問題はクリアしたにせよ、基礎工事や建築確認申請を済ませた物件でないと

後々トラブルになったりします。

 

3.営業所の使用権原は?

運送業の営業所として使用したい建物の所有者は誰でしょうか?

申請者が所有者であれば問題はありませんが、

賃貸で契約しようとする場合は少しばかり注意が必要です。

 

細かい契約内容は別として、注意しないといけない部分が契約期間です。

運送業の営業所として認可申請するには、最低でも2年以上の契約期間が必要なのです。

さらに、更新については、できれば自動更新だといいですね。

 

4.営業所と車庫との距離は?

営業所と車庫は離れていても大丈夫なのでしょうか?

答えは大丈夫です。

 

ただし、制限があります。

それは距離の制限です。

運送業の営業所と車庫の距離は、直線で10㎞以内(栃木県の場合)までしか認められません。

これ以上離れてしまうと認可が下りません。

 

ここにも注意!

運送業の営業所として使用したい建物を、不動産屋さんに探してもらうこともあるかと思います。

確かに不動産屋さんは不動産のプロです。

しかし、残念ながら運送業の手続きのプロではありません。

 

運送業の営業所は特に重要な意味を持ちます。

それだけに、色々な要件をクリアしないと運送業の営業所として使用することは出来ないのです。

運送業じゃない業種の他の会社が事務所として使っていたから大丈夫とか、

元々は店舗だったから大丈夫とかという案内をされることがあります。

このような案内をされたからといって、そのまま運送業の営業所として使用できるかどうかは別問題です。

実際、別な会社が事務所として使っていたとしても、運送業の営業所として使えないというパターンがよくあります。

 

不動産屋さんが大丈夫といっても、きちんと事前調査を行うようにしましょう。

 

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