運送業専門の行政書士が解説| 下請法の改正について
100台未満の運送会社(受託する方)の注意点
みなさん、こんにちは!
運送業専門行政書士の齋藤です。
今回は、2026年1月から実施される下請法について、
できるだけわかりやすく解説していきます。
今回は、受託する方、つまり下請けとなる運送会社
向けの内容となります。
【2026年1月施行】運送会社も対象に!改正「下請法」で求められる契約と支払いの見直しとは?
2026年1月、いわゆる「下請法」が名称・内容ともに大幅に改正され、
運送取引も新たに適用対象に加わります。
正式名称は「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」へと変わり、
荷主(委託事業者)と中小運送会社(受託事業者)の関係性にも大きな影響を及ぼします。
本記事では、従業員・車両数100名未満の中小運送会社が、
今回の法改正にあたってどのような点に注意すべきか、
実務上のポイントを整理します。
◆1.「下請法」が「中小受託取引適正化法」に変わるとは?
主な改正ポイント
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名称変更:下請法→中小受託取引適正化法(略称:取適法)
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用語変更:「親事業者」→「委託事業者」、「下請事業者」→「中小受託事業者」
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対象拡大:従来の製造・修理・役務提供に加え、運送取引も新たに追加
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従業員基準の追加:役務・運送は100人以下が対象に
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義務強化:発注書交付、適正な支払期日、書類保存義務の厳格化
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禁止事項追加:価格協議に応じない行為、実質的に代金を受け取れない支払手段の禁止
◆2.中小運送会社が注意すべきポイント
■契約書の整備と確認
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運送契約や発注書に運賃・支払期日・付帯業務の範囲を明記
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荷待ち・荷役などの無償作業が利益提供とみなされるリスク
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書面発行・保管の義務が強化されるため、契約・明細の保存体制整備が必要
■運賃の見直しと価格交渉
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燃料費・人件費の高騰を受けて、運賃の再協議を申し出る権利が保護
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委託事業者は正当な理由なく協議を拒めない
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協議に備えて自社コスト構造の“見える化”を行っておくことが重要
■支払手段・条件の見直し
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手形払いや割引ファクタリング等は実質禁止方向
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速やかに現金振込等、代金を確実に受け取れる支払方法への移行を推奨
■自社の立場と適用確認
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自社が「受託側」なのか「委託側」なのか、立場を整理することが必須
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委託側となるケースでは、自らが規制対象となる可能性がある点にも注意
◆3.法改正が運送業界に与える影響とは?
■構造変化と再委託の見直し
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多重下請け構造の中で、直接契約への流れが進む可能性
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元請・下請間の関係が見直され、契約簡素化・明文化の動きが加速
■適正な取引慣行の定着
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無償作業・不当な支払遅延といった「慣習」への是正圧力が強まる
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運送業界全体で「契約ルール重視」へとシフトしていく流れに
■中小運送会社の交渉力強化
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法的な後ろ盾により、中小運送会社からの交渉申入れがしやすくなる
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逆に、コンプライアンス対応ができないと、契約打ち切りのリスクも増加
◆4.罰則はどうなるのか?
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違反行為があれば、行政指導→勧告→企業名の公表という流れが強化
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直接的な罰金は限定的ながら、公表による reputational リスクは重大
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書面交付違反・支払遅延などが発覚した場合、行政調査・報告義務が課される恐れあり
◆まとめ:今、運送会社がやるべきこと
- 自社が受託対象となる契約の洗い出し
- 運送契約・発注書の見直しと明文化
- 支払条件(期日・手段)の点検と修正
- 運賃の交渉材料となる原価データの整備
- 書類の保管体制と社内マニュアルの見直し
◆あとがき
法改正はリスクではなく、健全な取引慣行を築くチャンスでもあります。
中小運送会社にとって
「契約の見える化」
「交渉力の強化」
「リスクの回避」
は、持続可能な経営への第一歩。
2026年1月の施行を目前に、今からの備えが重要です。
それでは、今回はここまで。
最後までお読み下さいましてありがとうございます。
またお会いしましょう!
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