運送業専門の行政書士が解説|整備管理者制度の運用改正をおさらい
大型車のタイヤ脱落事故と管理責任について
みなさん、こんにちは!
運送業専門行政書士の齋藤です。
少し前の話になりますが、令和5年10月、
整備管理者制度に関する運用ルールが一部見直されました。
この改正は、大型車のタイヤ脱落事故の防止を目的に、
整備管理者の責任がさらに強化された内容になっています。
事故の多くが、
日々の整備・確認不足によって防げた可能性がある
ことから、運送事業者や運転手の皆さんにとっても、
他人事ではありません。
この記事では、今回の改正内容を分かりやすく整理し、
どのような対応が求められるのかを解説します。
そもそも整備管理者制度とは?
トラックやバスなど、一定台数以上の車両を保有する運送事業者は、
「整備管理者」を選任する義務があります。
整備管理者は、車両の点検・整備が正しく行われているかをチェックし、
記録を残すなどして、運行の安全を守る重要な役割を担っています。
特に近年は、高速道路や一般道でのタイヤ脱落事故が問題化しており、
整備管理者の業務がより重要視されています。
改正①:タイヤ脱落事故が「解任命令」の対象に追加
令和5年10月の改正では、
整備管理者に対する「解任命令」の対象に、
大型車のタイヤ脱落事故が新たに追加されました。
つまり、重大な整備不備や管理ミスにより事故が発生した場合、
整備管理者を辞めなくてはならないということです。
解任命令の対象となる行為(6項目)
- 日常点検、定期点検等が不適切で、整備不良による事故を起こした場合
- 整備不良による事故で、整備管理規程に基づく業務を適切に行っていなかった場合
- 整備管理者自ら不正改造や指示、容認、不正改造車の使用指示等をした場合
- 選任届の内容が虚偽、要件を満たしてない、又は満たさなくなった場合
- 整備管理者としての業務遂行状態が著しく不適切な場合
- 大型車のタイヤ脱落事故が発生した場合(今回追加)
※注意:過去3年以内以内に同じ事故が発生していた場合
タイヤの脱落は、整備管理者だけでなく、運転手だけの問題ではなく、
他人の命を奪いかねない重大な事故につながります。
そのため、現場のチェック体制を「仕組みとして」強化する必要があります。
「大型車」とは?どの車両が対象?
今回の改正で言う「大型車」とは、以下のいずれかに該当する車両です。
- 車両総重量:8トン以上
- 最大積載量:5トン以上
- 乗車定員:30人以上(バスなど)
つまり、一般的な大型トラック・トレーラー・観光バスなどが対象です。
しかも、事業用とか自家用とかは関係ありません。
自家用(白ナンバー)でも対象になるので注意して下さい。
問題となるケースとしては、
後輪のダブルタイヤが片方だけ脱落するケースが多く、
原因の多くが「ナットの緩み」「締付け不足」「再点検の未実施」です。
改正②:整備管理者の業務に2つの項目が追加
整備管理者が担う業務内容にも、
タイヤ脱着作業に関して以下の2点が追加されました。
タイヤ脱着時の作業を管理表で見える化
タイヤの脱着・増し締め作業などについて、
「作業管理表」などを使って整備状況を記録・管理すること。
または、整備工場に対して適切な作業の実施を依頼・確認すること。
つまり、「誰が・いつ・どんな作業をしたか」を明確にし、
あとでチェックできる状態にしておく必要があります。
紙のチェックリストでも、デジタルでも構いませんが、
「記録が残るかどうか」がポイントです。
整備工場に依頼しているから大丈夫だと安心せずに、
記録簿等をきちんと確認し、実施状況を確認することがとても重要です。
自家整備をする場合は「作業要領書」を作成すること
自社でタイヤ交換や増し締めを行う場合は、
「タイヤ脱着作業の手順書(作業要領)」を作成すること。
作業要領書には、次のような内容を含めるのが望ましいです。
- 使用する工具・トルクレンチの規定値
- 作業手順(脱着順、締付順など)
- 増し締めのタイミング(走行後の再点検)
- 点検者の確認欄
誰が作業しても同じ品質・安全性を担保できるようにするのが目的です。
現場で求められる対応は?
以下は、事業者・整備管理者・運転手が連携して行うべき主な対応です。
- タイヤ交換作業を可視化する(作業表やチェックリストの活用)
- 作業要領を作成し、現場教育やOJTで浸透させる
- 交換後は必ず増し締めを実施し、記録を残す
- 整備管理者選任後講習を忘れずに受け、最新制度に対応する
まとめ
整備管理者制度の改正は、「書類上のルール」だけでなく、
実際の現場対応を見直すチャンスでもあります。
タイヤの1本の脱落が、重大事故につながる。
この意識を、事業者、整備管理者・運転手で共有し、
事故ゼロを目指した安全管理を徹底していきましょう。
特に、冬タイヤに替えるとき、夏タイヤに戻すときは自社で
交換するという運送会社もあるかと思います。
十分に注意して作業して下さい。
それでは、今回はここまで。
最後までお読み下さいましてありがとうございます。
またお会いしましょう!
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