行政書士の独り言|外国人の運転手の雇用で思うこと
外国人運転手を雇う前に、経営者として考えるべきこと
みなさん、こんにちは!
運送業専門行政書士の齋藤です。
物流業界における「人手不足」が叫ばれて久しくなります。
それに呼応する形で、国は外国人材の受け入れを徐々に拡大し、
ついに運転手という職種にも外国人雇用の波が押し寄せつつあります。
これを歓迎すべき前進と見る向きもありますが、
私はあえて「待った」をかけたい。
行政書士として運送業界に関わり、
日々経営者や現場の声に触れている立場から言わせていただきます。
私は、外国人運転手の雇用を“安易に”選択する経営判断には、
極めて強い懸念を抱いています。
そして、言いたい。
そもそも御社の運転手教育、きちんと出来てますか??
自社の運転手の教育すら満足に出来ていないのに、
外国人の雇用って無謀じゃないですか??
なぜ日本人運転手が不足しているのか??――その根本を見ずに外国人に頼るのは本末転倒
まず初めに、はっきりさせておくべき問いがあります。
それは、「なぜ今、運送業界で人手が足りないのか?」ということです。
この問いに真正面から向き合わず、単に
「人手がいないから」
↓
「採れないから」
↓
「外国人を雇うしかない」
という発想をしているのであれば、
それは経営者として極めて危ういと言わざるを得ません。
運送業界は、依然として
・長時間労働
・低賃金
・休日の少なさ
・福利厚生の不備
といった、構造的な課題を抱えたままです。
人が来ないのは、仕事の内容や労働条件に魅力がないから。
この業界で働きたい、続けたいと思える環境を作れていないこと
これが最大の原因と私は考えています。
低賃金の“労働力確保”としての外国人雇用――それは搾取と紙一重
そして今、外国人雇用が注目されている最大の理由は何かといえば、
「低賃金でも働いてくれるから」という点に他なりません。
ここに、私は強烈な違和感を覚えます。
経営者の中には、
「日本人はコストが高い」
「若者が続かない」
「外国人なら真面目に働いてくれる」
などという言葉を口にする方がいます。
しかし、そうした思考の出発点がすでに危険です。
“安く働かせられる人材”を求めている時点で、
経営の在り方として間違っているのです。
それは、単なる人件費削減であり、
構造的な問題の先送りでしかありません。
経営者の本来の仕事とは何か?
ここでもう一度、振り返って欲しいのですが、
経営者の仕事は、問題に“フタをする”ことではなく、
根本的な原因に向き合い、解決のための仕組みを構築することです。
人手が足りないなら、まずはその原因を解消する。
それが本来あるべき姿ではないでしょうか。
・運賃値上げを実行し、給与として還元する
・既存の日本人ドライバーが辞めない環境を整備する
・給与水準の見直しや評価制度の透明化
・長時間労働の是正と、休暇の取得促進
・教育制度の整備とキャリアパスの提示
こうした“仕組み”を整えることこそ、
持続可能な企業運営への第一歩です。
それを飛ばして、「外国人を入れればなんとかなる」
と考えるのは、非常に短絡的です。
女性・高齢者こそ、まだ活かしきれていない戦力
私は、外国人労働者よりも先に、
国内にいる潜在的な労働力に目を向けるべきだと考えます。
特に注目すべきは、「女性」や「高齢者」です。
これまでの運送業界は、いわば“男性中心・フルタイム前提”の設計でした。
しかし時代は変わっています。
● 軽い荷物、1㌧車や2㌧車を活用した配送
● 時間指定便
● 地域限定のルート配送
など、体力や拘束時間の壁を越えて働けるスタイル
はいくらでも作れるはずです。
実際、女性ドライバーや定年退職後の再雇用を
うまく活用している会社は、人材定着率も高く、
働きやすい職場として評判です。
そうした事例から学ばず、外国人に頼るというのは、
あまりにももったいない話です。
「外国人を雇うな」と言っているのではない
誤解のないように申し上げますが、
私は外国人雇用を一律に否定しているわけではありません。
優秀な外国人材を受け入れ、きちんと教育した上で一緒に働く。
それは国際社会の一員として当然あるべき姿であり、
今後ますます重要性を増す視点です。
しかし、その前提が「人手不足だから」「安いから」
という安易な理由であってはならない。
むしろ、日本人が敬遠するような環境のままで
外国人を雇うこと自体が、制度の悪用に近い行為
だと私は思います。
また、2024年問題で露呈した、「働きたいのに働けない」
という政策上の矛盾についてもメスを入れていく必要が
あると思っています。
さすがにこれについては、国会議員に期待するしかありませんが。
結局、働きたい人を働けなくしておいて、それで人手不足だと騒いで
外国人の雇用を進めさせるという、全く理由のわからない構造も
改革が必要です。
確かに、運転手を馬車馬のように寝る間も与えず、
走り続けさせるようなブラック企業には
運送業界から消えて欲しいのですが、そうではなく
稼ぎたいという意欲のある人の希望まで奪ってほしくないと思ってます。
業界の未来を支えるのは、「働きたくなる会社」
最後に――
この業界が持続可能であるためには、
「人が働きたくなる会社」を増やすことが必要不可欠です。
それは、日本人にとっても、外国人にとっても、
働くことに価値を感じられる会社。
つまり、人を大切にし、成長を支援し、
誇りを持てる仕事に育てる会社です。
運送業は社会インフラを支える重要な存在です。
その誇りを守るためにも、目先の人材確保ではなく、
未来への責任を果たしていくことが
今、強く求められているのではないでしょうか。
それでは、今回はここまで。
最後までお読み下さいましてありがとうございます。
またお会いしましょう!
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