巡回指導について
すでに運送業の許可をお持ちの方であれば、巡回指導という言葉を聞いたことがあるかと思います。
何度か会社で巡回指導を受けたこともあるかも知れません。
ただ、この巡回指導という制度や仕組みを理解されていない方もいらっしゃると思いますので、
このページで少し詳しく説明します。
巡回指導と監査の違い
まず、きちんとご理解頂きたいことが
「巡回指導」と「監査」との違いについてです。
よく巡回指導のことを監査と言ったりする方がいますが、
大体が巡回指導のことを監査と言っているようです。
巡回指導とは?
巡回指導とは、適正化事業実施機関という団体が行う指導のことを言います。
適正化事業実施機関とは簡単に言うとトラック協会の一部というイメージです。
トラック協会が国土交通省から指定されて巡回指導業務を行っているのです。
なので巡回指導に来る職員はトラック協会の職員となります。
もちろん、トラック協会の中でも部署は色々ありますので、その中の1つが適正化事業実施機関になります。
監査とは?
監査とは、運輸支局の監査部門の職員が行う制度です。
巡回指導よりもかなり厳しいです。
巡回指導は、あくまでも指導であるため特別な場合以外は行政処分にはなりません。
ところが、監査は運輸支局、つまり行政側が行う制度なので、
場合によっては行政処分を受けることになります。
巡回指導はいつ?
さて、巡回指導のタイミングですが、新規の場合は、運行開始届出を提出してから2~3か月以内に来ることがほとんどです。
その後は2年に1回というパターンが多いですね。
ただし、必ず2年に1回かというとそんなこともありません。
前回の評価が悪ければ、1年後に来る場合もあります。
巡回指導に来る場合は、必ず事前に通知が届きます。
この通知で指定された日付は、原則変えることが出来ません。
巡回指導で見られる書類
以下の書類が巡回指導の対象となる書類になります。
・運転者台帳
・点呼記録簿(直近3ヶ月分)
・運転日報(直近3ヶ月分)
・適性診断受診結果表
・運転記録証明書
・タコチャート又はデジタコグラフ(直近3ヶ月分)
・運行管理者、整備管理者選任届
・運行管理者、整備管理者研修手帳
・補助者基礎講習終了証、資格証
・運転者指導教育計画表
・運転者教育記録簿
・乗務割表
・出勤簿
・運行管理規程
・事故記録簿
・事故報告書
・事業報告書、事業実績報告書
・車両台帳
・整備管理規定
・定期点検計画表
・点検、整備記録簿(3か月、12か月)
・賃金台帳(直近3ヶ月分)
・健康診断結果、記録簿
・就業規則、36協定
・日常点検表
・運輸安全マネジメント
その他、税務、労務関係書類
巡回指導でチェックされる項目
巡回指導でチェックされる項目は全部で37項目ありますので順番に記載します。
事業計画等
1. ○ 主たる事務所及び営業所の名称、位置に変更はないか
2. 営業所に配置する事業用自動車の種別及び数に変更はないか
3. ○ 自動車車庫の位置及び収容能力に変更はないか
4. 乗務員の休憩・睡眠施設の位置、収容能力は適正か
5. 乗務員の休憩・睡眠施設の保守、管理は適正か
6. 届出事項に変更はないか(役員・社員・特定貨物に係る荷主の名称変更等)
7. ○ 自家用貨物自動車の違法な営業類似行為(白トラの利用等はないか)
8. ○ 名義貸し、事業の貸渡し等はないか
帳票類の整備、報告等
1. 事故記録が適正に記録され、保存されているか。
2. 自動車事故報告書を提出しているか。
3. 運転者台帳及び従業員台帳が適正に記入等され、保存されているか。
4. 車両台帳が整備され、適正に記入等されているか。
5. 営業報告書、事業実績報告書を提出しているか。(本社巡回に限る)
運行管理等
1. 運行管理規程が定められているか。
2. ◎ 運行管理者が選任され、届出されているか。
3. 運行管理者に所定の研修を受けさせているか。
4. 事業計画に従い、必要な員数の運転者を確保しているか。
5. ◎ 過労防止に配慮した勤務時間、乗務時間を定め、これを基に乗務割りが作成され、休憩時間、睡眠時間のための時間が適正に管理されているか。
6. ◎ 過積載による運送を行っていないか。
7. ◎ 点呼の実施及びその記録、保存は適正か。
8. ○ 乗務員記録(運転日報)の作成、保存は適正か。
9. ○ 運行記録計による記録及びその保存、活用は適正か。
10. ○ 運行指示書の作成、指示、携行、保存は適正か。
11. ◎ 乗務員に対する輸送の安全確保に必要な指導監督を行っているか。
12. ○ 特定の乗務員に対して特別な指導を行っているか。
13. ○ 特定の乗務員に対して適性診断を受けさせているか。
車両管理等車両
1. 整備管理規程が定められており、これに基づき、適正に整備管理業務がなされているか。
2. ◎ 整備管理者が選任され、届出されているか。
3. 整備管理者に所定の研修を受けさせているか。
4. 日常点検基準を作成し、これに基づき、点検・整備を行い、点検整備記録簿が保存されているか。
5. ◎ 定期点検基準を作成し、これに基づき、点検・整備を行い、点検整備記録簿等が保存されているか。
労基法等
1. ○ 就業規則が制定され、届出されているか。
2. 36協定が締結され、届出されているか。
3. 労働時間、休日労働について違法性はないか。
4. ○ 所要の健康診断を実施し、その記録・保存が適正にされているか。
法定福利等
1. ○ 労災保険、雇用保険に加入しているか。
2. ○ 健康保険・厚生年金保険に加入しているか。
とくに重要なポイント
37項目中特に重要なポイントがいくつかあります。
それが最重点項目と重点項目です。
読んで字の如く最も重要な項目とその次に重要な項目があります。
上記の表で◎印がついている項目が最重点項目で、○印がついている項目が重点項目になっています。
ここに注意!
巡回指導実施の際に悪質な法令違反が見つかった場合は、適正化事業実施機関から運輸支局へ通報されてしまいます。
速報
※運輸支局に速やかに通報※
■1.点呼の未実施
- 点呼の実施記録が保存されていない
- 点呼の実施記録に係る帳簿に記載が全くされていない
■2.運行管理者・整備管理者が全くいない
- 選任されている運行管理者や整備管理者が全くいない
- それぞれ資格を保有する人がいたとしてもきちんと選任届が出されていないと速報の対象になります。
■3.定期点検が全く実施されていない
- 定期点検整備記録簿が保存されていない
- 定期点検整備記録簿に記録が全くされていない
定期通報
■1.巡回指導の評価がEの場合で、3か月以内に改善報告をしない場合
- 巡回指導の評価がEの場合で、改善報告はしたけれど一部、未改善があり再度の巡回指導において改善がみられない場合
■2.巡回指導を拒否した場合
■3.社会保険等未加入の場合
相談
■1.名義貸し、白トラ利用等悪質であり、かつ、法令違反の疑いがある場合
■2.記録の改ざんの疑いがある場合
■3.巡回指導の評価がDの場合で、3か月以内に改善報告をしない場合
結果は?
平成27年から巡回指導の結果が事業者に告知されるようになりました。
この結果を総合評価といいます。
改善する必要がある事項を記載した用紙の一番下に総合評価の欄があります。
そこに今回の巡回指導の結果、つまり総合評価が記載されるのです。
総合評価の基準
評点は、37項目合計37点で点数を出し、AからEの5段階で評価をします。
各項目に適しているか否かで適否で評価していきます。
そして、巡回指導時に注意された箇所や改善しなければならない項目がある場合、1~3ヶ月以内に改善報告書を提出することになります。
1.A→大変良い→90%以上・適の数が37項目中34項目以上
2.B→良い→80%~90%未満・適の数が37項目中30項目以上
3.C→普通→70%~80%未満・適の数が37項目中26項目以上
4.D→悪い→60%~70%未満・適の数が37項目中23項目以上
5.E→非常に悪い→60%未満・適の数が37項目中22項目以下
※注意 最重点項目や重点項目に否がある場合は5段階評価で自動的に1ランク下がります。
万が一、結果がDやEとなってしまった場合は、1年以内に再度、巡回指導が行われます。
場合によっては上記でも説明しましたが、通報事案となり、運輸支局の監査となる場合があります。
このようなときはさいとう事務所にご相談下さい!
- まもなく巡回指導の時期だけどこのままでいいか不安だ
- 前回の評価があまりよくないので改善したい
- きちんとやっているつもりだが本当にこれでいいか心配だ
- 帳簿の書き方や保存の仕方など帳簿に関することがイマイチよくわからない
- 巡回指導の前に一度書類などを見て欲しい
- 毎月や定期的に会社に来て帳簿等を見てもらいたい
このような場合は、是非さいとう事務所にご相談下さい。
巡回指導前の帳票類のチェックなどのスポット業務から毎月、隔月の定期訪問、顧問契約など
皆様の事業の規模や方向性に合わせたお手伝いをさせていただきます。
費用につきましては、どの程度の業務をどの程度の頻度や時間をかけて行うのかで変わりますが、
スポット業務で3万円~、顧問契約で毎月15,000円から9万円の間が目安となります。
まずは無料相談を行っておりますので、無料相談をご利用下さい。
無料相談をしたからといって無理に業務を進めたり、顧問契約を迫ったりなどはいたしませんのでご安心下さい。
また、お客様の事業に係る一切の情報は厳守いたしますのでこちらもご安心下さいませ。